このブログでは、工作の記録、実験の結果や考察が散逸しないように専ら備忘録に使ってます。プログラムのソースや設計データ等は載せていませんが、詳しく知りたい方がおりましたらコメントいただければ対応します。

所有する主な測定器はこちらです。


2011年10月3日月曜日

トラッキングジェネレータ用広帯域アンプ(3)

前回シミュレーションした広帯域アンプの回路を少し改良してみました。
格安基板屋で50mm角基板が$10で作れるので、基板の横幅は50㎜で設計しています。
 右側の扇型のスタブの大きさと水平位置を変更して、S22の高周波側のマッチングを改善してみました。

出力レベルの平坦度も、だいぶ改善されました。とりあえず、これで発注してみたいと思います。



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2011年10月2日日曜日

トラッキングジェネレータ用広帯域アンプ(2)

DC~3.5GHzまでの広帯域アンプですが、フラットな特性(もちろん位相がくるくる回ってしまうのは論外)を出さないといけません。

増幅チップは、高周波広帯域増幅用MMIC(Microwave Monolithic IC)を使います。入出力インピーダンスが50Ωに整合されているので比較的簡単に広帯域アンプが作れます。
今回のMMICは、ミニサーキット社のERA-1です。DC~8GHzまで対応するMMICで、4GHzまで+10~12dBm増幅してくれます。これを2段カスケードで使用します。
基板は厚さ0.8mmのガラスエポキシ基板としました。

MMICでは、バイアス回路を経由して必要な電力をチップに供給しますが、高周波信号と電源を分離することが必須です。
この信号と電源の分離回路ですが、前に増幅回路を設計した際にコンデンサとインダクタを組み合わせてチョーク回路を作りました
今回も同様に、インダクタ、バイパスコンデンサとチップ抵抗を取り付けて回路を組んでいきます。
 この回路の電磁解析結果は次の通りでした。
 この結果からは、3.5GHzまで利得は19dBmから24dBmまでの範囲に収まっているのが分かります。またS32も-50dB以下となり、電源と信号の分離はできています。でも、もうすこし改善できるといいかな。

次に、このチョーク回路をミニサーキット社のチョークコイルに交換して設計してみます。
使用するチョークはADCH-80Aで、50MHz-10GHzまで使用可能なチョークコイルです。

ミニサーキット社の製品はSパラメータが公開されているので、シミュレーターで設計するのが容易です。今回も増幅用MMIC、チョークコイルのパラメータをダウンロードして使いました。

さて、以下のように回路を変更しました。チョークコイル(けっこうサイズがでかい)が基板の面積の結構な割合を占めています。
この回路ではさらに出力ポートのインピーダンスマッチングのためにスタブ(右側の扇型のパターン)を2つ挿入してあります。チップ部品のような集中定数ではなく、分布定数のコンポーネンツを入れるのがミソです。
この回路の電磁解析結果は次の通りでした。

DCから3.5GHzまでの利得は+20dBmから+24dBmまでの範囲に収まり、さきほどより改善しました。またS32も-70dB以下となり、電源と信号の分離もずいぶんよくなりました。
S11とS22のスミスチャートを見ると、3.5GHzまで中心に集まっています。
でも、もう少し中心に集まるようにマッチングを改善すると、もっと良い特性になります。

とりあえずの回路はできましたが、もう少し特性をよくするように回路を見直していきます。

今回はここまでとします。


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2011年10月1日土曜日

トラッキングジェネレータ用広帯域アンプ(1)

前回トラジェネのパーツがほぼ揃って、あとは組み立てるだけかなあと思っていたんですが、足りないものがありました。
トラジェネのブロック図のうち、2段目のミキサーの出力を増幅してからLPFに入れないといけないですが、そのアンプが足りません。おそらく2段目のミキサーの出力は-15~-18dBmくらいになるので、20dBmくらいのアンプが必要です。しかもこのアンプはDCから3.5GHzくらいまでGAINがフラットであるほどいいという代物です。

使用周波数がDCから数GHzまでとなると、さすがにMMIC(Microwave Monolithic IC)を使わないと設計が大変です。MMICの入出力インピーダンスは50Ωに整合されているので、整合回路を使わなくてすみます。
あとは、電源のバイアス回路のインピーダンスを考えればOKでしょう。

使うMMICは、前にも使ったミニサーキット社のERA-1です。これを2段にします。3.5GHzあたりまでフラットな性能にしないといけないので、電磁解析シミュレーターを使ってプリント基板の設計も行います。

実際の設計は次回です。


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2011年9月27日火曜日

電磁解析シミュレータによるRFアンプ設計(7.完成)

前回、ちょうどいいサイズの部品(チップインダクタ)が無く、大きいサイズのチップを無理やりつけたら性能が出なかったアンプ基板ですが、夕方、秋葉原に行って部品を仕入れてきました。

#今日はいい天気だったので、日米は営業してました(笑

こんな感じで部品を付け直してみました。

次に、このアンプの性能を再測定しました。下にシミュレーションの解析結果と実測定結果をのせました。

1.実測のS21を見ると、シミュレーションの解析結果と同様に1GHz付近にピークが出ています。 増幅度は約17dBmでシミュレーション結果より3dBmくらい低いですが、コネクタの損失等を考慮すればそんなにひどくありません。

2.方向性結合器(HP778D)を使って入力ポートの反射係数S11を調べてみました。この値が落ち込む周波数で、入力ポートのマッチングが取れていることが分かります。
実測グラフの赤線を見ると、1020MHz付近にピークがあります。これに対応するシミュレーションはグラフの濃い青線です。ピークの位置はシミュレーション通りですが、-30dBmまで落ちてることからマッチングはかなりよく取れていることがわかります。


S21とS11の二つを見てみましたが、他もシミュレーションの結果にマッチしていると思われます。

これまで7回にわたり、電磁解析シミュレーターのSonnetによる高周波回路の基板設計をしてみましたが、このSonnetはかなり使えるツールだという印象です。

シミュレーターで試行錯誤した後、一発で期待通りの動作をする実機をつくるというのは、これまでのアマチュア的製作手法から一歩飛び出す感じがして、とても楽しいです。


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2011年9月22日木曜日

トラッキングジェネレータ(4)中間まとめ

ランキングが少し戻ってきましたが、いま一歩です。更新頻度を上げていきたいのですが、このblogは実際にモノを作るのが売りなので、なかなか大変です(笑)
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さて、アドバンテストのスペアナR4131用のトラッキングジェネレータを作っていますが、必要な部品がかなりそろってきたので、ここで一回まとめてみようと思います。

まず、トラジェネのブロック図からおさらいしてみましょう。

トラジェネ内部で226.42MHzを作り、スペアナの2nd LO、1st LOを順番に混合させていくだけですが、アイソレーションをとったり、信号レベルを合わせたりと細かい調整が必要です。
226.42MHzの発振器は、以前このblogで製作記事をのせました。
回路を設計して、プリント基板を発注し、上図のように組み立てました。PLLの設定は、PICで行っています。この発振器からの226.42MHzを下図のアンプで増幅します。(このアンプも基板を設計してきれいに作り直したくなってます。)
そして、先日つくったPINダイオードのアッテネータで出力レベルを可変にします。


次に、スペアナからの1st,2nd LOの信号ですが、2nd LOは3.77GHzの固定周波数で、1st LOは4-7.6GHzのスイープ信号です。
この出力端子に信号が混入してスペアナのノイズレベルが上がらないように、アイソレーターを入れます。
アイソレータは必要数以上を在庫していますので、どのくらい挿入するかは、信号レベルなどを見ながら調整しようと思います。

これらはHARRIS他のアイソレータです。3.77GHzで使えるので、2nd LOに取り付けます。アイソレーションは20dB以上あるようです。

このアイソレータは4-8GHzの広帯域で使えるので1st LOに取り付けます。アイソレーションは20dBです。

次は、2nd LO 3.77GHzと、246.42MHzを混合するミキサーです。LO/RF 2.0-4.2GHzで、IFがDC-1.3GHzというミキサーです。

これは上のミキサーで混合した信号から余分な信号を除去するための4GHzのBPF(バンドパスフィルター)です。SAGEのFF1039で、3.93-4.07GHzが通過帯域です。

これは1stLOからの4-7.6GHzスイープ信号と、先ほどの4GHzの信号からDC-3.6GHzの信号を作るミキサーです。

上のミキサーから出力された信号から余分な信号を除去し、トラジェネの出力信号を作ります。
写真の上の細い棒が遮断周波数3.35GHz、下が遮断周波数2.0GHzのLPF(ローパスフィルター)です。最初は下のLPFで作ろうと思ってたんですが、遮断周波数3.35GHzのLPFが入手できたので、こっちを使います。

次に、各信号レベルを調節するためのアンプやアッテネータです。
A-100Lは、0.5-4.0GHzに使えるアンプで、利得は +13-15dB あります。5V 100mAです。

ALM/080-4033は、2.0-8.0GHzに使えるアンプで、利得は+33dBです。ちょっと強すぎなのでアッテネータを10dBくらいは入れないとだめかも。12V 250mAです。

MPA-7049は、2.5-4.5GHzに使えるアンプで、利得は +17dBあります。 5V 130mAです。

これらは1dB-10dBまでのアッテネータです。
最後に、これまでの高周波コンポーネンツを連結するためのSMAコネクタやセミリジットケーブルなど(在庫の一部)です。

以上のようにほとんどのパーツは揃いました。
次回は、信号レベルを見ながら調整していく作業を行います。

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