このブログでは、工作の記録、実験の結果や考察が散逸しないように専ら備忘録に使ってます。プログラムのソースや設計データ等は載せていませんが、詳しく知りたい方がおりましたらコメントいただければ対応します。

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2011年9月1日木曜日

ネットワーク・アナライザの校正基板(2)

前回、キャリブレーションを行う方法にSOLT校正があると書きました。
SOLT校正kitは、メーカーからコネクタ状で提供されるため、同軸コネクタがついたDUT(簡単にいうとテストする回路やモジュール)にしか使えず、基板上のマイクロストリップラインには使えませんと、物の本には書いてあります。また、基板上のマイクロストリップラインの校正にはTRL法が使われますともあります。



このTRL法はThru-Reflect-Lineの略で、簡単にいうと線路長の違う回路を測定して、その位相差を既知の値(線路長から計算できる)と比較校正するというものです。
このTRL法の他にも、いくつか校正法が存在します。
  • LRL (Line-Reflect-Line)
  • LRM (Line-Reflect-Match)
  • TRM (Thru-Reflect-Match)
TRL法の注意点としては、線路長の差が位相差20"から160"に入るように測定周波数の範囲が決まってしまうことです。つまり広帯域の校正が行えないということです。

ちょっとTRL法のお話をしました。これは基板上に長さの異なるマイクロストリップラインをつくるだけでいいので、作成が容易です。(基板1枚にマイクロストリップラインが1本のものを作るといい)

ですが、最初に出てきたSOLT法も、TRL法と同様に基板上にマイクロストリップラインで作ることができるはずです。もちろん、例えばLOADは、基板上に作った線路で整合しないといけないので広帯域なものを作るのは難しいですが、そこそこのものは作れるはずです。

次回は、SOLT法やTRL法について、マイクロストリップラインで作るときの設計(パターンとか長さとか)について書こうと思います。


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2011年8月24日水曜日

ネットワーク・アナライザの校正基板(1)

ネットワークアナライザーを使ったことがある人は、測定の基準点の校正をしないと役に立たないことを知っているでしょう。

このブログの最初の方で、高周波を評価するには電力を使うのが普通ですと書きましたが、ネットワークアナライザは位相と振幅を測定することで、電力の入出力および反射を表示する測定器です。(ネットワークアナライザにはベクトル型とスカラー型があって、前者は位相と振幅を見ますが、後者は振幅のみを見ます。)
一般的なネットワークアナライザにはポートが2つあり、その2つのポートの間に測定する回路等を入れます。この回路等を分布定数回路の2端子回路とみなし、そのSパラメータを測定するのがネットワークアナライザです。

数GHzから数十GHzの周波数になると、1λ(波長)が数センチから数10センチの長さになります。さらに伝送路がプリント基板上の配線になったり同軸のように誘電体に囲まれると、さらに波長が短縮します。つまり、高周波では伝送路つまりケーブルの長さにシビアであるということです。
先ほどのネットワークアナライザは位相を見るので、このケーブルの長さを考慮しないと、結果が違ってきてしまいます。

そこで、ネットワークアナライザを使う時には、実際に測定する素子や基板と、ケーブルの接点までの経路を校正してあげる必要があります。一番最初に書いた測定の基準点というのは、この校正をすることでした。
この校正作業に必要なものが、キャリブレーションキットと呼ばれている高価なコネクタです。


ですが、これらはコネクタの形状なので測定する基板の端っこまでの経路は補正できますが、基板上の配線までは補正できません。基板上の配線長が影響を及ぼすような周波数を扱う時には、キャリブレーションキットと同様な機能を持つプリント基板を作らないといけません。

今回は、このカスタムなキャリブレーションキットのお話です。

比較的低い周波数(10GHz未満)では、SOLTと呼ばれる校正を行います。SOLTは、Short、Open、Load、Thruの4つの頭文字をとったものです。
Shortは、信号線とアースを短絡しています。
Openは、逆に信号線は開放です。
Loadは、50Ωや75Ωなどの終端抵抗がされています。
Thruは、50Ωや75Ωなどのインピーダンスを持った線路の両端にコネクタがあり、信号は素通しです。

この4つについてインピーダンスでみてみると、
Shortは短絡しているために、入力信号と逆位相の信号が入力側に跳ね返ってきます。
Openはその逆で、入力信号と同位相の信号が入力側に跳ね返ってきます。
Loadは、インピーダンスがマッチしており、入力信号の反射がゼロになります。
Thruは、信号損失がほとんどなく入力信号が出力側から出てきます。
このようにインピーダンスがゼロ、∞、50Ω/75Ω等の時の位相差等をネットワークアナライザに覚えさせることで校正が行えます。


次回は、これらを基板上に作るときに、シミュレーターを使うお話です。


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