このブログの最初の方で、高周波を評価するには電力を使うのが普通ですと書きましたが、ネットワークアナライザは位相と振幅を測定することで、電力の入出力および反射を表示する測定器です。(ネットワークアナライザにはベクトル型とスカラー型があって、前者は位相と振幅を見ますが、後者は振幅のみを見ます。)
一般的なネットワークアナライザにはポートが2つあり、その2つのポートの間に測定する回路等を入れます。この回路等を分布定数回路の2端子回路とみなし、そのSパラメータを測定するのがネットワークアナライザです。
数GHzから数十GHzの周波数になると、1λ(波長)が数センチから数10センチの長さになります。さらに伝送路がプリント基板上の配線になったり同軸のように誘電体に囲まれると、さらに波長が短縮します。つまり、高周波では伝送路つまりケーブルの長さにシビアであるということです。
先ほどのネットワークアナライザは位相を見るので、このケーブルの長さを考慮しないと、結果が違ってきてしまいます。
そこで、ネットワークアナライザを使う時には、実際に測定する素子や基板と、ケーブルの接点までの経路を校正してあげる必要があります。一番最初に書いた測定の基準点というのは、この校正をすることでした。
この校正作業に必要なものが、キャリブレーションキットと呼ばれている高価なコネクタです。
ですが、これらはコネクタの形状なので測定する基板の端っこまでの経路は補正できますが、基板上の配線までは補正できません。基板上の配線長が影響を及ぼすような周波数を扱う時には、キャリブレーションキットと同様な機能を持つプリント基板を作らないといけません。
今回は、このカスタムなキャリブレーションキットのお話です。
比較的低い周波数(10GHz未満)では、SOLTと呼ばれる校正を行います。SOLTは、Short、Open、Load、Thruの4つの頭文字をとったものです。
Shortは、信号線とアースを短絡しています。
Openは、逆に信号線は開放です。
Loadは、50Ωや75Ωなどの終端抵抗がされています。
Thruは、50Ωや75Ωなどのインピーダンスを持った線路の両端にコネクタがあり、信号は素通しです。
この4つについてインピーダンスでみてみると、
Shortは短絡しているために、入力信号と逆位相の信号が入力側に跳ね返ってきます。
Openはその逆で、入力信号と同位相の信号が入力側に跳ね返ってきます。
Loadは、インピーダンスがマッチしており、入力信号の反射がゼロになります。
Thruは、信号損失がほとんどなく入力信号が出力側から出てきます。
このようにインピーダンスがゼロ、∞、50Ω/75Ω等の時の位相差等をネットワークアナライザに覚えさせることで校正が行えます。
次回は、これらを基板上に作るときに、シミュレーターを使うお話です。
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