このブログでは、工作の記録、実験の結果や考察が散逸しないように専ら備忘録に使ってます。プログラムのソースや設計データ等は載せていませんが、詳しく知りたい方がおりましたらコメントいただければ対応します。

所有する主な測定器はこちらです。


2011年10月18日火曜日

トラッキングジェネレータ用広帯域アンプ(5)

先日、3.5GHzまで使える広帯域アンプを設計して基板を発注しましたが、今日届きました。
下が設計データです。
そして、これが今日届いた基板です。グリーンレジストは電源レギュレータ部分だけにとどめ、あとはレジスト&メッキなしにしてあります。また、基板の下1/3は余ったのでLCフィルターの実験基板にしてみました。
毎週のように基板を作っているのですが、やはり高周波回路というのは、きれいに作ればそれなりに良い特性を示すものです。
このクオリティで、基板の単価が穴あき基板を買うより安いとあれば、作ってもらった方がよいに決まっています。これからも、何か作るときは、すぐ基板を設計して発注したいと思います。

今回のアンプは、さっそく性能を評価してレポートします。



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2011年10月16日日曜日

負帰還による広帯域アンプの設計と製作(3)

前回まで、負帰還のエミッタ接地増幅回路の定数のうち、抵抗値を実際に求めました

設定ゲイン12dB、電源電圧12Vのときの抵抗値は以下の通りです。

RC=990Ω(430Ωと560Ωの直列接続)
R1=3.8kΩ
R2=1.2kΩ
RF=220Ω
RS=6Ω
RE=187Ω(330Ωと430Ωの並列接続)

次は、バイパスコンデンサC1~C3の値ですが、目的の周波数帯の信号を素通しするような容量にしないといけません。必要があれば異なる容量のコンデンサを並列接続しても構いません。

理想的なコンデンサは、周波数が高くなるにしたがってインピーダンスは直線的に減少します。実際のコンデンサも周波数が高くなるとインピーダンスは下がりますが、ある周波数を超えると逆にインピーダンスが上昇し始めます。その周波数の領域ではコンデンサはキャパシター成分よりもインダクタンス成分が強くなるためです。つまりコイルとして働いています。

このように、実際のコンデンサはコンデンサとコイル(と抵抗成分)が直列、並列に接続したようなモデルで考えられるので、その共振点を考慮しないといけません。

さて、今回の広帯域増幅回路の周波数帯はDC~1GHzです。この周波数帯の信号が素通りになるように(反射が無いように)しないといけません。これを電磁解析シミュレーターで解析したいと思います。

まず0.1uFだけで解析してみました。
S11の反射特性を見てみると、DC近くで-36dB、1GHzで-28dBでなかなかいい感じです。でももうすこし落としたい気がします。そこで、0.068uFを並列に接続して、特性をみてみました。
DC近くで-40dB、1GHzでも-41dBで、だいぶ改善しました。
さらにDC近くの反射特性を下げたいので、今度は1uFと0.1uFの組合せで並列接続して解析しました。
DC近くの反射は-56dBとなりました。バイパスコンデンサはこれでいきましょう。
今回まで決まった定数を入れた回路図を上に示しました。次回は全体をまとめてシミュレーションしてみます。


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2011年10月15日土曜日

I/Oてんこもりデータロガー基板(2)

先日、I/OてんこもりなPIC-USBの基板を設計し格安基板屋FUSIONに出しましたが、本日到着しました。
上は発注したCADデータです。
これが到着した基板です。
またまたいい感じです。部品の実装と新しいファームウェア作成は後でとりかかりましょう。



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2011年10月12日水曜日

負帰還による広帯域アンプの設計と製作(2)

前回は、エミッタ接地のトランジスタ増幅回路に負帰還を入れた回路の概略を説明しましたが、今回は抵抗値を実際に求めてみます。
この回路ですが、直流信号と交流信号では有効となる素子が違ってきます。まず交流信号の場合ですが、バイパスコンデンサC1~C3に交流信号が流れるために、抵抗RC、RE、R1が働かなくなり、次の回路と等価となります。回路に寄与しない部分は薄消ししてあります。
まず、帰還抵抗RFとRSの関係式と、
RF×RS = N×2500
ただし、入出力インピーダンスを50Ωとする。
利得Gと帰還抵抗RFとRSの関係式
G = (RF/50 - 1)2
この2つの式から、G = (N×50/RS - 1)2 が導けます。

利得Gと帰還抵抗RFとRSそれぞれの関係がどうなっているのかグラフに図示してみたいと思います。

まず、帰還抵抗RSとゲインGとのグラフですが、トランスの巻線比を1対1,2,4の3種類でプロットしてみました。帰還抵抗RSはエミッタとGNDの間にある抵抗ですが、そもそもトランジスタの内部にはエミッタ内部抵抗reがあり、この値以下には下がりません。
通常のトランジスタの場合では、内部抵抗値reとエミッタ電流IEの間にre=0.026/IEという関係があり、 IEを5mAとすると5.2Ωとなります。したがって、帰還抵抗RSはreを含めて10Ω程度が下限でしょう。つまり、巻線比が1ならゲインは16dBが上限となります。さらに帰還抵抗RFとゲインGとのグラフもプロットします。

今回の設計では、設計ゲインを12dBとします。

また、使用するトランスですが、GHz帯まで使える巻線比が1より大きいトランスは種類が少なく、ちょうど手持ちにあったトランスは巻線比が1:1のものだったので、今回はN=1とします。

利得Gと帰還抵抗RSの関係式から、RS(エミッタ内部抵抗reを含む)は11.2Ωとなります。エミッタ内部抵抗reは5.2Ωより、帰還抵抗RSは6Ωとなります。
同様に帰還抵抗RFは223Ωと求められます。

次に、直流でのバイアス抵抗を求めます。直流では、パイパスコンデンサC1~C3は無いものとみなせます。また、トランスのインダクタンス成分も無視できます。したがってエミッタ抵抗はRS+RE、コレクタ抵抗はRCとなります。したがって次の図のような回路となります。回路に寄与しない部分は薄消ししてあります。
 まず、BFS505は、コレクタ電流Icが5mAの時、トランシジョン周波数が9GHzまで伸びます。したがって、コレクタ電流Icは5mAとします。この時の増幅率hfeは120であるので、ベース電流IBはIB=IC/hFE からIB=0.042mAとなります。

エミッタ電圧VE1Vと適当に決めます。エミッタに流れる電流はコレクタ電流とベース電流の和なので、5.042mAです。これがエミッタ抵抗RS+REを通るので、VE=1.0=(RS+RE) x 5.042mA から、(RS+RE)は198Ωとなります。先ほど、エミッタ抵抗RS(エミッタ抵抗reを含む)は11.2Ωと求められたので、エミッタ抵抗REは186.8Ωとなります。

抵抗RCを求めます。ここでコレクタ-エミッタ間電圧VCEをデータシート記載と同じく6Vとします。すると、コレクタ電圧VCはエミッタ電圧VE+コレクタ-エミッタ間電圧VCEから、7Vとなります。
電源電圧VCC12Vとすれば、電源とコレクタ電圧VCの差を抵抗RCで落とせばよいので、
VCC- 7 = RC x (IC+IB)、 よって 12-7=RC x 5.042、 RC=990Ω 

最後にベース電圧を決める分圧抵抗R1、R2を求めます。一般的なシリコン系トランジスタのベース-エミッタ間電圧VBEは0.6Vなので、ベース電圧VB=VE+VBE=1.6Vとなります。抵抗(R1+RF)とR2でコレクタ電圧VCを分圧しているので、VB = R2/(R1+RF+R2) x VCとなり、R2を1.2kΩとすればR1は3.8kΩとなります。

以上、設定ゲイン12dB、電源電圧12Vのときの抵抗値が以下のように求まりました。

RC=990Ω(430Ωと560Ωの直列接続)
R1=3.8kΩ
R2=1.2kΩ
RF=220Ω
RS=6Ω
RE=187Ω(330Ωと430Ωの並列接続)

次回は、バイパスコンデンサを選定し、実際にシミュレーションにかけて挙動を見てみます。


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2011年10月11日火曜日

負帰還による広帯域アンプの設計と製作(1)

以前、電磁解析シミュレータがどのくらい使えるのか試すために、高周波トランジスタを用いたRFアンプを設計製作しました。
トランジスタ増幅回路の設計と、コンデンサとインダクタによる入出力インピーダンスの整合をシミュレーションで行い、実際に基板を作成して期待通りの性能が出ることを確認しました。
しかし、コンデンサとインダクタで整合をしたので、周波数帯域(一般に減衰量3dBの範囲)はそんなに広くありませんでした。(まあ、当たり前ですが)

このblogでも広帯域アンプなら高周波広帯域増幅用MMIC(Microwave Monolithic IC)だということで、ミニサーキット社のMMICを好んで使用していますが、技術力が落ちていきそうでちょっと心配になってきました。

ここで、ちょっと初心に戻ってトランジスタを使って広帯域アンプを作ってみようかなと思います。
(blogネタ切れなんじゃないか?というつっこみはスルーです)
トランジスタの増幅回路には、エミッタ接地、ベース接地、コレクタ接地など回路がありますが、今回はエミッタ接地回路です。ですが、ちょっと違うのは広帯域アンプを作るために、負帰還を行うということです。負帰還とは、出力の一部を入力に戻してあげることで、これにより全体の出力が一定になります。
この負帰還の増幅回路の帯域幅は、トランジスタのトランジション周波数の10%くらいになります。


さて、高周波トランジスタを用いたRFアンプの設計製作で使ったBFS505という石がまだ余っています。もったいないので、これを使いましょう。この石のトランジション周波数は9GHz程度なので、DC~1GHzくらいの広帯域増幅回路を設計しましょう。

まずいつものとおり、トランジスタ回路で重要なバイアス回路を設計します。下の図は、RFアンプでも出てきた、エミッタ接地回路の基本形です。
ちなみに、抵抗R2はコレクタ電流に対して増幅率hfeがほとんど変化しないようなトランジスタの場合には省略しても大丈夫です。RFアンプの設計製作では、抵抗REも使いませんでした。
とりあえず、この回路のまま使うとして、この回路に負帰還回路を挿入します。コレクタを帰還抵抗RFを通してトランジスタのベースに接続してあげます。また、出力については、トランスをコレクタに接続して、出力信号を外に出してあげます。
下の図は、新たに帰還抵抗RF,RS、バイパスコンデンサC1、C2、C3、トランスT(巻線比N:1)を追加した回路図です。

回路図に入力信号の通り道を書き入れました。この負帰還の回路では、エミッタにある抵抗RSでトランジスタ回路の入力インピーダンスが上がります。

入力信号はトランジスタのベースからエミッタに抜け、交流信号であるためバイパスコンデンサC2を経由してGNDに抜けて戻ります。このトランジスタ回路の入力インピーダンスは(1+hfe)×RSとなります。BFS505の増幅率hfeはIc 5mAのとき120なので、この回路は抵抗RSが10数Ωとしても高い入力インピーダンスを持つことになります。

さて、高い入力インピーダンスを持ち、フィードバックを使う増幅回路といえばオペアンプを思い浮かべますが、実は、上の負帰還増幅回路は簡単なオペアンプの中身を作っているのでした。上のトランジスタ増幅回路をオペアンプ記号に置き換えてみます。
高い入力インピーダンスの素子の出力と入力を抵抗でバイパスしてあげると、入力信号は大部分が帰還抵抗に流れていきます。当然、入力インピーダンスは低下します。
このバイパスをする抵抗を帰還抵抗と呼びます。
では、入力インピーダンスがどのくらいの値になるかというと、帰還抵抗RFをオペアンプのゲインAで割った値となります。
ZIN=RF/A

さて、このオペアンプのゲインAはどのくらいでしょうか?このオペアンプの中身はトランジスタ増幅回路です。一般に、トランジスタ増幅回路のゲインは、増幅率hfeに関わらずエミッタの負荷抵抗RCをコレクタの負荷抵抗REで割った値で求められます。しかし、今回の回路では、交流信号はバイパスコンデンサC2とC3を通るため、抵抗REとRCは通らず、下の図の赤線で囲まれた部分を通ります。
したがって、エミッタの負荷は抵抗RSとなり、コレクタの負荷は、トランスの2次側(巻線比Nの側)の交流負荷となります。このトランスの交流負荷は、出力ポートから見た1次側のインピーダンスをZOUTとすると、その巻線数倍(N倍)となり、N×ZOUTになります。
したがって、ゲインAは、 コレクタの負荷(N×ZOUT)をエミッタの負荷RSで除して
A = (N×ZOUT)/RS
となります。

入力インピーダンスの式 ZIN=RF/Aを用いて、Aを消去すれば、
RF×RS = N×ZIN×ZOUT
となりました。
普通は、入出力インピーダンスを50Ωにするので、
RF×RS = N×2500
となります。
また、オペアンプの帰還回路のゲインの式、G = (A-1)2をそのまま使って、
G = (RF/50 - 1)2
となります。

以上のように、トランジスタ増幅回路に負帰還をさせる場合には、まず交流のゲインを決めます。そして、交流信号が適切に増幅されるような抵抗値を決めます。次に、直流でのバイアス回路で動作点を決めます。適切な動作点での抵抗値が決まったら、直流信号と交流信号では増幅回路の定数が異なるので、バイパスコンデンサを用いて抵抗を分離することで両方に対応することができます。

と、いろいろ書きましたが、抵抗値をどのように決めていくかを実際にやってみないとピンとこないと思いますので、 次回はそれを行います。


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