このブログでは、工作の記録、実験の結果や考察が散逸しないように専ら備忘録に使ってます。プログラムのソースや設計データ等は載せていませんが、詳しく知りたい方がおりましたらコメントいただければ対応します。

所有する主な測定器はこちらです。


2011年9月3日土曜日

オペアンプの直線性とデータロガー

いきなり、引用から始まります

サーベイメータ

携帯用の放射線測定器。アルファ線、ベータ線、ガンマ線及び中性子線用のサーベイメーターがある。検出器の種類には電離箱式、GM管式、シンチレーション式などがある。
測定内容として、空間放射線量率測定(ガンマ線)や放射能表面汚染測定(ベータ線)の検査などに用いられる。
サーベイメータ
右から電離箱式、NaIシンチレーション式、GM管式
(引用終わり)

ちょっと仕事で、このサーベイメータのデータを自動収集するデータロガーを作りました。

今日のネタは、このデータロガーで使うオペアンプの増幅性能のお話がメインです。

上にあげたサーベイメータにはペンレコーダー用にフルスケール10mVのアナログ信号が出ています。データロガーを作るには、この電圧値を拾ってPCに格納するアダプタを作ればOKですね。
ここではPICを制御に使おうと思います。PICのA/Dコンバータでデータをサンプリングし、PCとPICをUSBで接続します。USBコントローラーとA/Dコンバータを両方内蔵しているPICとしてはPIC18F2550がありますので、これを採用します。

まず、サーベイメータの出力電圧をA/Dコンバータでデジタル値に変換するのですが、このPICのA/Dは分解能は10ビットです。電源が5Vなので約5mV刻みでしか測定できません。
フルスケール10mVは、PICのA/Dコンバータの分解能から見ると低すぎるので、A/Dコンバータで変換する前に増幅する必要があります。
オペアンプの非反転増幅回路で約100倍に増幅すればフルスケールは1V程度になり、扱いやすくなります。
上図に、オペアンプによる非反転増幅回路を示します。

さてオペアンプは何を使いましょうか?サーベイメータからの出力電圧は測定値に対してリニア(直線)で出力されているので、これを増幅する回路にも直線性が求められるのは当然ですよね。
そしてサーベイメータからの出力電圧が最大10mVという条件があるので、このような低い電圧のところでも増幅回路に直線性があるかどうか調べないといけません。
ここで、手持ちのオペアンプの中で、高性能オーディオ・オペアンプOPA2134、高出力オペアンプNJM3414、汎用オペアンプLM358の3つを候補に選び出しました。すべて5Vの単電源で動作し、秋葉原とかで普通に売っているICです。

さて、それぞれのICに標準電圧発生器から電圧を印可して出力がどのように変化するか見てみます。横軸は入力電圧(mV)、縦軸は出力電圧(mV)を示します。

1)OPA2134
いきなり、これは×です。直線の回帰式にも乗ってないです。まあ、オーディオ用なので仕方ないですね。

2)NJM3414AD
これはなかなかよさそうです。1mVから5mVまできれいに直線になっています。しかし1mV以下の低いレンジでは0.6mVくらいで出力電圧が0Vになってしまいます。どうやらオフセットが足りないようです。

3)LM358
これもNJM3414と同様に直線性があるようです。さらに1mV以下の低いレンジでも適度なオフセット電圧があり直線性は十分です。入力信号の電圧は0Vから使えそうです。

今回はこのオペアンプを採用しましょう。

あとは基板を設計して組み立てます。いつもの通り、基板パターンはEAGLEで設計し、FUSIONに基板を発注しました。
PICを含めた全回路の説明はここでは行いませんが、下図のようなものを作りました。PICにはオペアンプの出力の他、基準電圧ICの2.5Vを入力することで、測定値の補正を行うようにしてあります。


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2011年9月1日木曜日

ネットワーク・アナライザの校正基板(2)

前回、キャリブレーションを行う方法にSOLT校正があると書きました。
SOLT校正kitは、メーカーからコネクタ状で提供されるため、同軸コネクタがついたDUT(簡単にいうとテストする回路やモジュール)にしか使えず、基板上のマイクロストリップラインには使えませんと、物の本には書いてあります。また、基板上のマイクロストリップラインの校正にはTRL法が使われますともあります。



このTRL法はThru-Reflect-Lineの略で、簡単にいうと線路長の違う回路を測定して、その位相差を既知の値(線路長から計算できる)と比較校正するというものです。
このTRL法の他にも、いくつか校正法が存在します。
  • LRL (Line-Reflect-Line)
  • LRM (Line-Reflect-Match)
  • TRM (Thru-Reflect-Match)
TRL法の注意点としては、線路長の差が位相差20"から160"に入るように測定周波数の範囲が決まってしまうことです。つまり広帯域の校正が行えないということです。

ちょっとTRL法のお話をしました。これは基板上に長さの異なるマイクロストリップラインをつくるだけでいいので、作成が容易です。(基板1枚にマイクロストリップラインが1本のものを作るといい)

ですが、最初に出てきたSOLT法も、TRL法と同様に基板上にマイクロストリップラインで作ることができるはずです。もちろん、例えばLOADは、基板上に作った線路で整合しないといけないので広帯域なものを作るのは難しいですが、そこそこのものは作れるはずです。

次回は、SOLT法やTRL法について、マイクロストリップラインで作るときの設計(パターンとか長さとか)について書こうと思います。


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2011年8月29日月曜日

オシロスコープの修理 (Tektronix 2430A)その2

2430Aの修理は無事完了と思ってたんですが、どうもCh.2の接触不良が改善しません。コネクタを揺らすと、信号が途切れたりします。
これは内部で半田クラックになってると踏んで、再び分解しました。
入力部はアッテネータユニットに接続されてからアンプに入るようになっています。このアッテネータユニットはシールドケースに入ってねじ止めされています。狭いところのねじを外すのがめんどいですが、なんとかはずしました。

アッテネータユニットのシールドを取ってみると、やはり入力(BNC)からアッテネータ基板(写真の白い基板)までの線が外れかかっていました。半田で接続した後、仮組みし、もう一度チェックです。

今度はうまくいったようです。

元通りにして、めでたしめでたし。


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2011年8月28日日曜日

オシロスコープの修理 (Tektronix 2430A)

調子が悪く要修理で放出されたテクトロのオシロを、とっても安くゲットしました。
Tektronixの2430Aという、150MHz 2chのデジタルオシロスコープです。
1980年代後半の製品で、当時150万くらいしたでしょうか。
しっかりとした作りなので、まだ十分動くと思います。

で、今回のオシロの症状をチェックしてみました。
まず、電源スイッチをポチっと。起動してファンが回り(ファンが回るのは結構重要なポイントです。)、自動的に自己診断が開始します。
全PASSです。コネクタやつまみなども異常ないようです。

んー、5分くらいしてから再びDIAGを行います。
すると、CCD関係のゲインがFAILし、ほかにもいろいろFAILしだしました。こりゃいかんですね。

次に波形を見てみようかなと基準信号を入力したところベースが安定しません。上下に波形ががふらつく感じ。
またCh.2の垂直ポジションつまみを動かすと、通常なら波形を上下に動かせるんですが、こいつは勝手に動いてしまいます。上か下に行きっぱなしで波形が見えなくなっちゃいました。
さらに時々Ch.2に入力できなくなります。
重症ではないですが、使用するには支障をきたすレベルです。

さて、症状はわかったので原因と対策を考えましょう。
まず、通電直後は問題ないのに時間がたつとおかしくなるのは、冷却がうまくいってなくてオーバーヒートしている可能性が高いです。テクトロの2400シリーズは熱にシビアなので、ほこりが放熱板とか部品にくっついて風の通りが悪くなってるんじゃないかなあと予想。
つうわけで、ふたを開けてエアーダスターで吹き飛ばすことをやってみましょう。
波形のベースが安定しないのも、冷却がうまくいってないからでしょう。

次に波形のポジションつまみですが、回路図を見るとこの部分は可変抵抗器になっていました。たぶん可変抵抗器内部の接触不良です。軸の隙間にポリコールを垂らせば直ると思います。

では、本体をばらして中身をとりだします。さすがテクトロって感じの作りですね。本体下部には発熱する素子がてんこ盛りです。
内部のほこりをエアーダスターで吹き飛ばし、細かい掃除を行います。次にフロントパネルを分解し、接触不良と思われるボリュームの軸から内部へポリコールを浸透させます。
信号のコネクタも接触不良っぽくなってそうなので、ついでにポリコールをたらします。
いよいよ通電をしてみると、なかなかよいようです。対策はドンピシャっていうところでしょうか。

ここで、扇風機を本体の下部にあるヒートシンク群に向け、送風開始です。
なぜかというと、本体カバーがクローズになっているときは冷却ファンが風道を作って全体が冷えるんですが、校正等でオープンにしている場合には、強制的に内部を冷やさないとオーバーヒートするからです。
校正マニュアルにも、これをやらないと素子が破壊されることもあるよと、要注意事項として書いてありました。

まず、安定性のチェックとして、しばらく放置して何回か自己診断をしてみましたが問題ありません。

こんな感じで、全チェックPASSしています。
あとは校正を行います。校正するときは、サイドの基板にあるJ156のショートプラグを引き抜くことで、メニューのEXTCALが有効化されます。メニューの指示通りにキャリブレータから所定の電圧を印可して校正します。この辺はさすがデジタルオシロ、簡単になってます。
ショートプラグを元に戻し、最後にケースを元通りにして終了です。
テスト信号を入力してみましたが、Ch1,2とも問題ありません。
往年の名機が復活して喜ばしいのですが、活躍の場はあまり無さそうなのが残念です(笑


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2011年8月24日水曜日

ネットワーク・アナライザの校正基板(1)

ネットワークアナライザーを使ったことがある人は、測定の基準点の校正をしないと役に立たないことを知っているでしょう。

このブログの最初の方で、高周波を評価するには電力を使うのが普通ですと書きましたが、ネットワークアナライザは位相と振幅を測定することで、電力の入出力および反射を表示する測定器です。(ネットワークアナライザにはベクトル型とスカラー型があって、前者は位相と振幅を見ますが、後者は振幅のみを見ます。)
一般的なネットワークアナライザにはポートが2つあり、その2つのポートの間に測定する回路等を入れます。この回路等を分布定数回路の2端子回路とみなし、そのSパラメータを測定するのがネットワークアナライザです。

数GHzから数十GHzの周波数になると、1λ(波長)が数センチから数10センチの長さになります。さらに伝送路がプリント基板上の配線になったり同軸のように誘電体に囲まれると、さらに波長が短縮します。つまり、高周波では伝送路つまりケーブルの長さにシビアであるということです。
先ほどのネットワークアナライザは位相を見るので、このケーブルの長さを考慮しないと、結果が違ってきてしまいます。

そこで、ネットワークアナライザを使う時には、実際に測定する素子や基板と、ケーブルの接点までの経路を校正してあげる必要があります。一番最初に書いた測定の基準点というのは、この校正をすることでした。
この校正作業に必要なものが、キャリブレーションキットと呼ばれている高価なコネクタです。


ですが、これらはコネクタの形状なので測定する基板の端っこまでの経路は補正できますが、基板上の配線までは補正できません。基板上の配線長が影響を及ぼすような周波数を扱う時には、キャリブレーションキットと同様な機能を持つプリント基板を作らないといけません。

今回は、このカスタムなキャリブレーションキットのお話です。

比較的低い周波数(10GHz未満)では、SOLTと呼ばれる校正を行います。SOLTは、Short、Open、Load、Thruの4つの頭文字をとったものです。
Shortは、信号線とアースを短絡しています。
Openは、逆に信号線は開放です。
Loadは、50Ωや75Ωなどの終端抵抗がされています。
Thruは、50Ωや75Ωなどのインピーダンスを持った線路の両端にコネクタがあり、信号は素通しです。

この4つについてインピーダンスでみてみると、
Shortは短絡しているために、入力信号と逆位相の信号が入力側に跳ね返ってきます。
Openはその逆で、入力信号と同位相の信号が入力側に跳ね返ってきます。
Loadは、インピーダンスがマッチしており、入力信号の反射がゼロになります。
Thruは、信号損失がほとんどなく入力信号が出力側から出てきます。
このようにインピーダンスがゼロ、∞、50Ω/75Ω等の時の位相差等をネットワークアナライザに覚えさせることで校正が行えます。


次回は、これらを基板上に作るときに、シミュレーターを使うお話です。


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